栃木少年殺害:
宇都宮地裁 
判決要旨
2000.06.01

(犯行に至る経緯)

 A(被告人、少年)は、中学の同級生であるB、Cとともに、1999年9月29日から、Bの勤務先の同僚である須藤正和さん(当時19歳)を連れ回し、消費者金融から借金させたり、同僚、友人、親にうそを言わせて、借金をさせたり振込送金をさせたりして、多額の現金を巻き上げ、遊興に使っていたほか、同年10月からは、熱湯のシャワーや沸騰した湯をかけるなどして須藤さんが逃げ惑う姿を見て面白がったりしていた。

 Aらは、同年11月30日、警察だと名乗った人物が須藤さんの電話に出たことから、須藤さんの親が警察に行っていることが分かり、驚き慌てた。同年12月1日夕方には、Cがバイクと衝突する事故を起こしたため、警察が動けば須藤さんに対するAらの所業が発覚するのは時間の問題であると危機感を募らせた。Aは、同日夜、須藤さんを殺害することを考えるに至った。翌2日午前、警察からAの携帯電話に電話があり、Aらは、Cの事故で警察が動いていることを確実に知った。Aは、逮捕の危険性が切迫していることを感じ取り、B、Cに対し、殺害を持ち掛け、渋る2人に対し、警察に捕まれば「少なくとも5、6年は出て来られない。20代の一番楽しい時期を刑務所で過ごすのか」などと説得し、3人で、相談のうえ、ネクタイで須藤さんを絞殺してその遺体を穴の中に遺棄しセメントで固めて隠ぺいすることを共謀。Aらは、途中、銀行に立ち寄り、須藤さんの口座から下ろした金で作業着、軍手、スコップなどを買ったうえ、犯行現場に行き、スコップで穴を掘ったり、セメントをこねたりした。

(罪となるべき事実)

 Aは、B、Cと共謀のうえ、須藤さんを殺害してその死体を遺棄しようと企て、(1)同年12月2日午後2時40分ころ、栃木県市貝町の山林内において、AがBに「ちゃっちゃとやってこい」と早く須藤さんを殺してくるよう命令し、Bが、須藤さんに命じて全裸にさせてうずくまらせ、目をつぶらせ、その頚部(けいぶ)にネクタイを巻き付けた上、Cと2人でその両端を力いっぱい引っ張って頚部を絞め付け、同所において、須藤さんを頚部圧迫による窒息により死亡させて殺害し、(2)その直後ころ、前記場所において、遺体を穴の中に投げ込みセメントを流し込んで土中に埋没させ、死体を遺棄した。

(法令の適用) 略

 (量刑の理由)

 本件は、Aが、B、Cと共謀のうえ、被害者を約2カ月にわたって連れ回していた間に、遊興費を得るため被害者から多額の現金を巻き上げたことや、被害者のほぼ全身に極めて重傷の熱傷を負わせるなどした凄惨(せいさん)なリンチが発覚することを恐れ、犯跡を隠ぺいするため、人里離れた山中で、被害者を殺害し、土中に埋めて遺棄した事案である。犯行は、計画的で凶悪な犯行であり、結果は誠に重大である。

 犯行の動機は、Aらの身勝手な保身のためである。Aらは従順な被害者に対し、見るも無残な熱傷を負わせるなどしておきながら、警察に発覚すれば、「20代の一番楽しい時期を刑務所で過ごす」ことになるとして、安易に被害者の抹殺を図ったのであり、犯行の動機は極めて自己中心的であって、酌量の余地は全くない。

 Aらは、本件犯行を共謀し、被害者の預金を使って、犯行の準備をしており、その卑劣さは、たとえようがない。

 犯行の態様は、被害者の目の前で被害者を埋める穴を掘り、セメントをこね、遺体を遺棄する準備を整え、被害者に命じて全裸にしたうえ、その首にネクタイを巻き付け、BとCが2人がかりで力いっぱい絞め付け、被害者が首に手をやって必死にもがくのもかまわず、首を絞め続け、うめき声を発したり咳(せ)き込んだり、失禁し、口から血を吐き、うつぶせに倒れても絞め続け、ついに、被害者を窒息死させ、次いで、Aらが被害者を穴の中に投げ入れ、セメントを流し込み、土をかぶせて踏み固めたものである。被害者は、乗用車の中で、穴が掘られるのを見ていたもので、そばにいた少年(当時Aらと行動をともにしていた高校生、16歳)に、「生きたまま埋めるのかな、残酷だな」とぽつりと漏らしたものの、逃げようとはせず、じっと一点を見詰めており、右少年によると確実に殺される覚悟をしていた。自らの墓穴が掘られるのを知りながら抵抗もせず、死を覚悟していた被害者の心境を思うと、痛ましい限りである。Aらの犯行は、残酷、残虐非道である。Cは、殺害実行時のBの形相を「鬼のような顔としか表現できないくらいに、怖くて真剣な表情」と形容しているが、まさに、当時のAらは鬼と化していたと言っても過言でない。

 被害者は性格が優しく、友人が多かったばかりでなく、スポーツも好きな若者であった。被害者は、たまたま、Bと職場が同じで、性格がおとなしかったがために、Aに金づるを探すように求められていたBに目を付けられ、Aらの格好の餌食(えじき)となってしまった。被害者が、Aらに従順につき従い、約2カ月も連れ回されていたのは、Aらを極度に恐れた結果、逃げる気力を失う異常な心理状態に陥らせられていたからであり、被害者に落ち度と目すべきものは何もない。Aらは、まじめに働いていた何らの落ち度もない19歳の少年の未来を、いわれなく無残に断ち切ったもので、被害者の無念、苦悶(くもん)、苦痛の程度には計り知しれないものがある。被害者がAらに連れ回されている間に生じた被害者名義の多額の借金を返済しながら、その安否を気遣い不安な日々を送っていた両親は、変わり果て正視に耐えない被害者の姿を確認しなければならないという最悪の事態に直面させられるに至り、大きな衝撃を受け、深い悲嘆と絶望のどん底に突き落とされた。将来を期待していた最愛の一人息子が殺されたあげく、死者の尊厳を踏みにじられコンクリートに隠され冷たい土の中に埋められていたことを知った両親の痛恨の情には筆舌に尽くしがたいものがあり、両親は犯人の極刑を望んでいる。

 犯行後、Aらは、罪証を隠滅し、15年の時効期間を逃げ切ろうなどと話し合い、駐車場で花火遊びをして興じ、追悼花火と称した。犯行後の情状もよくない。

 が凶悪な犯行が少年らによって犯されたことの社会的影響も無視できない。

 Aは、首謀者で主犯である。被害者殺害を発案、計画し、他の共犯者を賛同させ、実行に当たっては、自らはほとんど手を汚さず、犯行を遂行した。犯行現場で、被害者が車の中で待機させられている間、Aは、被害者に対し、笑いながら話しかけ、車を埋める穴を掘っているとごまかした。その後、再び笑うような表情で被害者に接し、死を目前にした被害者に対し、車の中で消費者金融会社のコマーシャルの歌を歌わせたか、身ぶりをさせたという証拠もある。穴を掘り終わると、共犯者に「ちゃっちゃとやってこい」と命じ、自分は、車の中で音楽を聴いており、被害者の死亡を確認すると「ちゃっちゃと運んじゃいな」と遺棄を指示した。遺体を移動させる途中に、一休みし、交際中の女性に電話している。Aは卑劣、狡猾(こうかつ)であり、冷酷非情である。

 公判では、自分の行為は死刑になってもおかしくないとか死刑を覚悟していると述べながら、「須藤君の分まで頑張って生きたいというのが本当の気持ち」と供述し、遺族の心情を逆なでしている。真剣に反省しているのかどうか疑わしい。少年であること、Aの両親が被害者の両親の慰謝の措置を模索していることなどを考慮しても、Aの刑事責任は余りにも重大であり、無期懲役刑を免れない。